自らの働く場は自分で決める、その思いからとある分野を選択した。
いろいろなことがあった。


せいいっぱい背伸びをして、あたらしいものに挑んだ。
眠っていたわたしには、目標をもって挑むことは楽しいことだった。
仲間と呼べる人間ができた。尊敬すべき人間ができた。
ぼろぼろになって働きながら、それでも色々なものを獲得した。


だが、力が足りなかった。
自分と異なる人種がいることを分かっていなかった。
社内のその人達にとっては、わたしはさぞ理解しがたい奇妙な動物だったろう。


わたしは、無力なまま暴れる、あるいはそのフリをすること
しかできなかった。そして、力不足ゆえに、仲間を傷つけた。
わたしには言葉ではなく、示すだけの力がなかった。


それでも、時間は止まらない。
ぼろぼろのままでも仕事はある。
こころは時に昂るが、それは偽の興奮だ。
自分がやれていることは分かる。だが、それだけだ。


わたしの仕事場にいる研究者らは、明るい。
何年も彼等とつきあって、ようやく分かったことがある。
彼等は独立した存在だ。それが彼等の持つ力だ。
わたしがかつて、曖昧ながら無意識的に求めた、自由さだ。

「とっくに決めているんでしょ?
何度も同じことを相談するのは滑稽だわ。」
と嫁(クールで美しい嫁)は言った。


わたしは考えたあげく、30半ばにして、
自分のため、大学院に行くことに決めた。