彷徨える舌/星

その最前線にほんのすこしだけ触れたとき、わたしは緊張し、自分の力の無さに怯え、そして魅了されたのだ。
そこは教科書にも載っていない、変化し前進しようと学者が戦っている先端の場だった。
小さな問題を解決できる経験と、大きな問題に向かい続ける意思と、知識と論理とその他全てが試される場だ。

文字通り何の力もなく、その場の険しささえ理解していなかったわたしは、その場にいるべきではなかったかもしれない。
その先端だけが持つきらめき。逃げ出してもなお、わたしを捕えて離さないそれは、力の無いものには呪いともいえる。

その後、力の無いままに、仕事のなかでも常にそれを求めてきた気がする。ほんとうの先端にはまだたどりつけないが、
教科書を読み、もっと基礎をきたえなくてはと分かっていながらも機会を見つけて論文を読む。
選択と集中というよりもむしろ、興味赴くままに発散しており、それでは本当の力は手に入らないのだ。

それでも、だんだんといろいろなものがつながっていく。少しは力がついてきたのだろうか?
そして何度も何度も同じことを思い知る、学問は全て物理だと。
ああ、神は細部に宿りたまう、だ。概要だけではなく詳細を。抽象も重要だが具体もだ。

さて、どこまで目指せるか?おっさんのわたしにはそれはなかなかに重要な問題だ。