彷徨える舌/プロローグのような

わたしは日々の仕事に振り回されていた。もっと力があれば、と願いながら、むしろ計画なき忙しさ、かりそめの充実にささやかな満足を感じていた。

日々の仕事は慣性となってわたしを縛る。頂きの上の上を、憧れとともに眺めるだけなのか。ようやく山の高さが見えてきているのに。自嘲したわたしに、彼女は言った。

「そこに行けるかどうかわからないですって?違うわ。貴方がそこに行きたいかどうかでしょ?」

その彼女の言葉は、どこかで聞いたことのあるようなありがちな台詞だったが、しかし、わたしを射った。

時間が無ければ、作ればいい。ほんとうにそうしたいのならば。そのための知識であり、知恵だ。わたしのなかで眠っていたなにかが、ゆっくりと起きだしてきた。